本年度はまず、前年度2月に意匠学会で行った研究発表を一部加筆修正し論文にまとめた。長野県須坂市の田中本家博物館所蔵品調査を、同時代の三越呉服店の商品カタログと照合させながら検証し、子供を介在させて発展した日本の消費文化についてまとめた同論文は、学会誌『デザイン理論』46号に掲載され、2005年度の意匠学会論文賞を受賞した(11月、京都嵯峨芸術大学における意匠学会大会での授賞式に出席)。 昨年度に引き続き、子供用品の市場における位置づけと、商品デザインの傾向、消費者の意識に関する研究に取り組んだ。今年は特に七五三というイベントを駆使して、子供服が近代的な流行商品に組み込まれていく過程について、これまで調査した資料館の所蔵品と当時の文献資料を照合させるというテーマについて、考察を加えた。この成果については9月に日本デザイン学会ファッション・デザイン部会例会において「ファッション化する子供用品」という題目で発表を行った。 さらに子供用品の具体的事例の調査として、今年度は石川県金沢市のおもちゃ博物館所蔵の子供用品の調査を行った。玩具を中心とした同博物館では、戦前期の所蔵品は全体の一部ではあるが、紙箱など保存状態も良好で、特に前回の田中本家博物館調査と同様、戦前の国産玩具の多くが輸出用に生産された外国向けデザインの商品で、これらが国内市場に流れ、消費者に受容されていった事実を再確認することができた。 また、今年度はこれまでの調査データをまとめる作業にとりかかった。具体的にはスライドフィルムとして保存してある資料について、すべてスキャナーで読み込みデジタル・データに一本化する作業を中心に行った。
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