今年度前半期は、平成16年度・平成17年度に収集した映像資料の分析と編集を実施した。11月は愛知県設楽郡東栄町御園において花祭り調査を行い、2月から3月にかけてはインドネシア、バリ州において女性舞踊家へのインタヴューを実施した。 御園地区における花祭りには、熟練した技巧を求められ舞や体力的に厳しい成人男子によって踊られる舞が多いが、唯一、花の舞は、幼い子どもによって舞われる演目である。御園地区に限らず、花祭りを伝承する奥三河地方では少子化が著しく、舞を舞う資格を持つ子どもを確保することが困難な状況にある。伝統的には、地区内の男子に限られていたものが、現在では、地区内の女子や地区外の縁者にまで範囲を広げて、舞手を確保している。自ら伝承する意識を持つ場合が多い成人に比べて、義務感や使命感のない子供に舞を習得させることは難しい。現在は、その伝承過程の現代的変容について考察している。 バリ島の民族舞踊の多くは、20世紀初頭に伝統舞踊の要素を取り入れて新たに作られたもので、現在「古典舞踊」と呼ばれる舞踊の多くは、1930年代以降に創作されたものである。「古典舞踊」創成期に舞踊を習い、外国人観光客の前で踊り、海外でも公演を行った2人の70歳代の女性舞踊家へのインタヴューと、主に公的教育機関において舞踊を習得した30歳代〜60歳代世代の女性舞踊家へのインタヴューをまとめている。今後は、各世代の女性舞踊家の舞踊習得過程を明らかにした上で、それらを比較検討し、民族舞踊の伝承システムの現代的変容が伝統文化に与えた影響について考察する予定である。
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