研究概要 |
1.平成16年は、「信任(信認)論」に関しては主として文献のサーベイを行った。信任論の文献を50以上渉猟する過程で、対立概念としての「契約論」に関する文献の読み込みの必要性を認識し、第一次・第二次Restatement, Corbin, Fuller, Fried, Atiya等、英米契約論の古典から現代の文献を多数検討した。その上で「信任」の一般原理に関する英語論文を法学の専門誌向けに書き始めた。ただ、当初提示しようとした基本命題に若干不備があることが判明し、現在その修正に取りかかっている。また、企業の社会的責任に関する幾つかのシンポジウムで信任論に基づく講演をした。 2.「比較コーポレートガバナンス論」の研究に関しては、その基本的な理論的枠組みを要約した"What is Corporation? -- the Corporate Personality Controversy and Comparative Corporate Governance"という論文がF.Cafaggi, A.Nicita and U.Pagano eds., Legal Orderings and Economic Institutionsに掲載予定となった。またコーポレートガバナンスに関する国内の多くの研究会や会議で発表し、有益なコメントを受けた。さらに3月16日から31日までDenver大学のHaider Kahn教授を招聘し、コーポレートガバナンス論に関する集中的な討議を行った。その中で理論枠組みの食い違いも浮かび上がり、さらに討議を続けることを約束した。Kahn教授には、東京大学経済学研究科で開催されたBetween Market and State in the Global Economyという会議で発表をお願いし、日本の学界にも知見を披瀝してもらった。
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