本年度は、最終年度として、研究の成果の広報とまとめを行った。 広報活動については、2007年10月末から11月始めにかけて米国東海岸でコーポレート・ガバナンスに関する研究成果の発表を行った。Yale大では第9回John Whitney Hall記念講演者に選ばれ(日本人では最初)、11/7に"What Will Become of the Japanese Corporation?-A Comparative Perspective"と題する講演を行い、Columbia大では11/9に同名の講演を行った。ともにvideo収録され、各大学からインターネットに掲載される予定である。 また、比較会社論の立場から会社買収に関する研究を行い、それに基づいた提言を2008/2/6の日本経済新聞の経済教室欄に掲載した。日本で最初の買収に関するまとまった法制ルール提言である。 信任論に関する研究は、いくつかの理論的困難の解決に時間が取られていたが、理論の骨子がほぼ完成し、"A Theory of Fiduciary Relationships"、と"Informational Dominance and Fiduciary Relationship"、の2本の英文論文を書き進めている。今夏には完成する予定であり、完成次第、第一論文は法学専門誌、第二論文は経済学専門誌に提出する予定である。第一論文は、後見人/被後見者、信託受託者/受益者、経営者/会社、医者/患者、法律家/依頼人、代理人/本人など広範な人間関係がなぜ契約関係とは異なった信任関係によって維持される必要があるかを主として法理論の立場から示し、第二論文は、情報理論的手法を用いてinformational dominanceという概念を提唱し、それを用いてなぜ医者/患者関係には信任法の適用が必要かを示した。
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