研究概要 |
1秒間に400コマの高速撮影ができるCCDカメラを導入して,日常的な物理現象を正確に理解させるためのスローモーションビデオを撮影し,PC上での教材開発環境を整えた。この撮影速度は,日常的な物体の並進運動を物理現象として理解させるための,生徒・学生の認識を補完し,定量的な議論への導入には適切である。開発したシステムの特性として, 1.太陽光の下での普通の明るさであれば特殊な光源が不要であり, 2.1秒程度の現象持続時間を含む6秒程度の撮影ができ, 3.ハード的なトリガは不要で,映像を分析してトリガ相当時刻が得られ, 4.解像度が低い白黒映像ではあるもめの,1回の撮影における総データ量が300Mバイト程度で,効率的な教材が開発できる(具体的には,30分程度の作業でバッチ処理による物体位置取得・回転・重畳・トリミング・ビデオ化が一通り可能), 今まで一般には,現象を定量的に記述するための実験精度が重視され,同様な教材開発は暗室においてストロボ撮影で行うことが一般的であり,これは,数理的議論に疎外感を抱く生徒・学生に対して,特殊環境での現象・議論いう印象を与えがちであった。本研究では,彼らにとって現象がアクセス可能と実感できることを重視し,目常的な現象を撮影・分析できるものとした。特に,除外しきれない様々な要因の影響を分析して教育上適切な映像を峻別するという継続的な開発環境ができた。成果の一部は http://www. e. chiba-u.jp/~tkato/BorderlessPhysicsEducation/ にて公開している。講義実践を重ねる中で,学習者の経験評価については今後まとめることになる。本研究では運動現象に限定したが,それ以外の分野にある「数値化が本質的に困難な現象」についても,直観的に理解させる教材を.開発することが次の課題として浮かび上がった。
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