研究分担者 |
片平 昌幸 秋田大学, 医学部, 助教授 (90250860)
中込 とよ子 秋田大学, 医学部, 助手 (40155693)
中込 治 長崎大学, 大学院・医歯薬総合研究科, 教授 (70143047)
有澤 孝吉 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30203384)
松岡 昌則 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70111242)
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研究概要 |
計算機による感染症伝播のシミュレーションが本研究の骨子である.感染症の伝播を記述するために必要な要件には,大きく2つの視点からのものがある:1)感染症固有の病理病態に関する情報,2)感染症が伝播する「場」(社会)に関する情報,である.我々が強く意識して本研究を推進する理由の1つに,現在の感染症疫学の基盤となっている従来の数理モデルによる感染症伝播の記述では,この2つの視点からの議論がほぼ完全に抜け落ちていることから,新しいモデルを提唱することにあった. 本年度の研究では,社会要因を考慮した多くの計算機シミュレーションが抱える脆弱性(特に手法の妥当性)を統計学的に検証し、「ゲームから科学への進展」の礎を確立することを第一日標に掲げた.その成果は,第37,38,39回の数理社会学会において発表してきた.また,平成17年6月に開催される第3回日米合同数理社会セミナーでの発表が受理されている. 本年の研究において最も注日している成果には,第一に,我々が採用する計算機シュミレーションの方法論の妥当性が統計学的にその合理性が検証できたことである.その結果,「基礎再生産数(Basic Reproductive Number, R_0)と有効再生産数(Effective Reproductive Number, R)という従来の数理モデルの疫学的指標が,実際の社会における疫学を十分には記述し得ない」あるいは「それらは正確な指標となり得ない」という結論への科学的な論拠を提供する糸口が判明した,第二には,感染症伝播の対象となる複数の場(地域)を取り入れた計算機シミュレーションを、「Grid計算」にて行わせるプログラミングがほぼ完成したことである.この結果,複数の地域の社会的特徴(当面は,人口構成,商業活動,地域間の人の出入り等を考慮)を反映させた,異なる複数の地域を伝播の「場」としたシミュレーションが可能となった.当然,従来の数理モデルでは全く取り扱えない. 平成17年度は,シミュレーション手法の妥当性を検証した結果の計算機科学の国際誌へ発表を皮切りに,特定の社会状況を反映した大規模なシミュレーションによる評価結果を詳細に検討することとなる.
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