研究概要 |
本研究は,世界的大規模グルッド計算環境において,ナノ摩擦のような微小機械開発に役立つ基礎物性に関する実際的規模の大規模計算機シミュレーションを,様々な手法を融合させたマルチスケール-ハイブリッド法によって実行しうることを証明することが目的である.初年度は,ハイブリッド量子古典計算コードを発展させると共に連続体的手法を融合させること,大規模グリッド計算環境を実際に安定して利用できることを実証することの計2点のサブテーマで発展があった.(i)ハイブリッド量子古典シミュレーション法をさらに発展させ,ボンド破壊や再結合する空間領域を密度汎関数法で扱いその周辺領域を分子動力学法によって古典原子として扱うシミュレーションコードとして確立した.また,実際的規模の系を扱うためには,連続体記述法を周辺領域に適用する必要がある.連続体的手法の一つであり原子論的手法とのハイブリッド化に適すると思われる粗視化粒子法を改良し実際の三次元系に適用できるようにした.分子動力学法との融合のテストを行い,シームレスに連結することを確かめた.(ii)開発したハイブリッド量子古典コードを用い,アメリカ・ピッツバーク計算機センターの512CPUと産業技術総合研究所-グリッドセンターの1280CPU(=1024+256)の合計1792CPUからなる,前例がないほど大規模な計算グリッドを太平洋をはさんで構築し,腐食前駆現象に関するシミュレーションを実際に10時間連続して一度もダウンさせずに行うことに成功した.十分に大規模計算グリッドが実用的であることを実証した.
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