研究概要 |
今回の研究では、地形の動力学の中でもおもに2つの事項について重要な結果を得た。 1.砂丘の水槽実験に関わる研究者(阪大 勝木、遠藤)と共同し,バルハン砂丘の衝突過程につて水槽での縮小実験と理論模型による数値実験を比較検討し、定性的に非常に良い一致を見た。 とくに、衝突によって2つのバルハンが合体するか分裂するかの決定条件について、初期のバルハンのi)サイズの比、およびii)風(流水)に垂直な方向に関する位置のずれが決定的な因子であることを明らかにした。さらに風の方向だけにダイナミクスを限定し、かつ、運動の自由度を3変数に縮約した力学系を構成し、上のi)の事項を解析的に説明した。本研究の報告はJPSJに掲載され、編集部に評価を受け、letter of editor's choiceに選ばれjournalホームページの巻頭で紹介され読売新聞でも大きく紹介された。これらの結果の一部は、関連した砂丘研究の発展の紹介とともに研究代表者によってまとめられ2008年中に培風館より非線形科学シリーズのうちの一巻として出版される予定である。 2.火成岩からなる海岸線で見られる柱状節理の構造形成に関して、実験と理論解析を組み合わせた研究を行った。従来は、主に,フィールドワークによる観測とモデルによる理論的な解析が個別に行われており、とくに、露頭部分の詳細な観測によって角度分布,角形分布や節理側面のすじ状の周期構造など,いくつもの興味深い性質が明らかにされているが,実験の困難さが,亀裂の三次元的な構造の把握を妨げており,理論との比較も十分とは言えなかった。本研究では、粉体と液体の混合物の乾燥過程という,柱状節理の形成とは異なる状況において柱状節理と類似した亀裂の三次元パターンが生成される現象に着目し、亀裂進展の実験を行い、NMRによるバルク内部に出現した柱状構造の観察と対応させながら、柱状構造形成の理論模型を提案した。本研究は柱状摂理を実験と模型・数値計算によって制御可能な形で理解するための新しい可能性の提案となっており第1報はPhysical Review誌に掲載され、第2報も投稿中である。
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