研究概要 |
1.色素細胞特異的に発現する遺伝子機能を調べるために、アッセイ系の構築を試みた。色素前駆細胞を胎児から単離し、Keratinocytesと共培養を行ったところ、培地にLiClを添加することで、色素前駆細胞を効率に培養できることを見いだした。 2.幹細胞制御の分子的基盤を明らかにする目的で、色素細胞をGFPで標識したトランスジェニックマウスの毛包から幹細胞を含む様々な分化段階の単一の細胞を単離し、single-cell global cDNA amplification法とRealtime PCR法を組み合わせることにより、単離した個々の細胞における遺伝子発現プロファイルを解析した。その結果、バルジ部位の色素幹細胞の集団では、Sox10,Kit,Mitf等の色素細胞の維持や増殖分化に重要な遺伝子の発現が認められず、色素幹細胞ではこれらの遺伝子の発現を調節する何らかの制御機構が存在することが示唆された。さらに興味深いことに、色素幹細胞においては、House keeping genesを含む多くの遺伝子の発現が他の細胞集団と比較して著しく低下していることが認められ、globalにmRNAの転写を抑制する機構が働いていることも示唆された。これらの制御機構を解明するために、色素幹細胞の遺伝子発現プロファイルと他組織の幹細胞の遺伝子発現データーベースとを比較したところ、約70種類の遺伝子が各種幹細胞において重複して発現していることがわかった。幹細胞共通の分子制御機構を解明するために、これらの遺伝子のプロモーター部位について共通に存在する転写調節部位を検索した。その結果、C/EBP,FOX,AP1およびNF-kB結合領域が統計的優位さを持って高頻度に存在することがわかった。これらの因子の既知の機能より、幹細胞が何らかのストレス応答反応を起こしていることが推測された。
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