今年度の研究では、現在の都市計画行政や都市再生事業、都市再開発に関する資料を、書籍、パンフレット等のプリントメディアに関して収集すると共に、これらに関連するインターネット上のウェブサイトを調査した。また、六本木ヒルズ、お台場、晴海トリトン、日本橋コレド等、現代の東京都心部の再開発地区でフィールドワークを行い、さらに幕張ベイタウン、町田市のグランベリーモール、佐野市のプレミアム・アウトレット等の周辺部の開発地区でもフィールドワークを行い、東京都市圏における都市開発および再開発を通じてどのような都市空間が形成されてきているのかを現地調査した。これらの調査から、80年代以降の都市開発では、隣接する地域との連携や当該地域の歴史との連続性を必ずしも考慮することなく、恣意的な文化記号やイメージを空間デザインに取り入れることで、周囲の都市空間に対しては閉じた場に虚構的なスペクタクルの空間を作り出されていることが確認された。こうした動向はすでに80年代の消費社会化の過程で渋谷等の盛り場にみられたものだが、90年代以降の都市空間の生産では80年代のそれとは異なり、巨大な開発・再開発地区全体を周囲の都市空間から切り離し、まるでそれが室内かテーマパークでもあるかのような空間の生産がおこなわれおり、その結果、開発・再開発街区と周囲の都市空間との間に社会的な不連続が生じている。このことは単に空間の現象形態にのみかかわるのではなく、都市空間に対する人びとの関係の形の変容とも相関する事態であると仮説的に考えられる。次年度以降は、この仮説にもとづきさらにデータの収集と分析を進めてゆく。
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