(1)都市における社寺林の価値認識に関する基本的概念の検討 平成16年度調査においては、まず都市における社寺林の価値認識に関する基本的概念の検討を行う目的で、「社叢」という概念に着目し、その価値認識について検討を加えた。すなわち、特に明治後半期以降制度化される、現在でいうところの文化財保護行政に相当する、史蹟名勝天然記念物保存の制度化の課程において、「社叢」という概念がどのように価値付けられたかについて、特に明治後期から昭和初期にかけて天然記念物保存の制度化に尽力した植物学者、三好学、白井光太郎らの言説を分析した。その結果当初史跡とも重なる広い環境概念であった社叢が、生態学的関心が中心となる天然記念物の概念に固定化していき、これが戦後も継承されていく過程を読み取ることができた。 (2)環境史・社会史の観点からの社寺林調査 一方、環境史・社会史の観点からの社寺林調査にも着手した。平成16年度は、社寺林を含めた神社の立地を周辺自然環境及び歴史環境との対応から把握することを目的とし、神社の種類に対応した立地の特徴について調査を行った。東京ないしその近郊を対象に、「氷川神社」に代表される「出雲系」の神を祭神とする神社の立地を調査した。まだ調査は十分ではないが、大国魂神社(東京都府中市)、氷川神社(埼玉県大宮市)、氷川神社(東京都板橋区)など、河川や沼地など、水環境との関連性が強く示唆され、社寺の立地と自然環境の関係にもいくつかのタイプがあることが想定されさらに調査を継続中である。
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