今年度は以下の二つの取り組みを行った。 1.米国シアトル市の公立小学校で、国際理解教育の一環としてスペイン語と日本語との多言語パーシャルイマージョン教育を実践している学校と、外国語教育を一切行っていない学校を選び、それぞれの児童を対象に言語や異文化に関する意識調査を実施した。その結果、次の3点が明らかとなった。 第1に、多言語イマージョンの学校と外国語教育のない学校と最も差が見られたのは、「外人」というものを余り意識しなくなるということであった。 第2に、言語や国(文化)の多様性に対する認識及び言語の多様性に対する肯定的な態度は、多言語イマージョンの児童と外国語教育を受けていない児童との差はなくむしろ外国語教育のない児童の方が肯定的態度を示すことすらあり得る。ただし、彼らは多言語・多文化の米国社会にいるため、いずれの学校も全体として多様性に対しては肯定的な態度を持つ傾向がある。 第3に、目標言語圏に対する好意的態度は特に「国際語」であるスペイン語イマージョンの児童が顕著であることが証明され、当該言語教育の目標には叶うものの広く多様な地域に対する興味を喚起するには至っていない。しかし、学校全体としては、それぞれ異なる地域に興味を持つ多様な児童を育てていることになる。 2.地域の公立小学校と共同で、多言語・多文化意識を育てる英語活動を計画し、小学校側は主として英語運用能力を目的とする活動を、大学側は留学生、院生、学部生で指導者グループを組織し、主にアジアをテーマとしたいわば国際理解英語活動を展開した。小学校側は各学年週1回のペースで、大学側は各学年年間4〜5回英語活動を行った。活動実施前後に、言語や異文化に対する児童の意識調査を実施し、短期的な意識の推移を調べたが、今のところ顕著な変化は見られなかった。活動の効果を定期的に調べながら、今後は年間カリキュラムの構築に入る予定である。
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