国際理解教育に資する授業モデルとカリキュラムの研究をさらに深化させることを目標として、今年度行った活動は大きく次の三つに分けられる。 1.昨年度授業モデルを実践した小学校児童の意識調査と同じ項目で、英語を含む外国語活動を全く実施していない公立小学校児童に対して調査を行い、両者の結果を比較分析した。そこから次の二点が指摘できる。 (1)英語を道具として学習すると好きになる可能性があるものの他の外国語学習への意欲に直ちにつながるとは必ずしも言えない。 (2)アジアの言語、文化を前面に出しながら共通の言語として英語を捉えてみても英語が好きになるかもしれないが、それほど簡単に多言語、多文化共生意識が生まれることは期待できない。 以上、昨年度の研究結果を英語非実施校と比較することにより、国際理解教育としての英語活動の困難さがより鮮明となったが、活動の頻度、期間、国際理解や教え方などを含む教師の力量などが異なると、期待できる成果が見られるのかもしれない。次の課題である。 2.年度当初小学校校長の人事異動により昨年度の連携校での実践ができなくなったため、近隣の別の公立小学校において、上で課題の一つとされた比較的頻繁かつ長期的な活動実践を行い、その効果を測定した。全体として大きな変化は見られないものの、活動前後で昨年度のものと比べ有意差が生じる項目が増加している。詳細は現在分析中である。 3.英国において複数の外国語教育を実践している学校及び、スイスにおいて言語意識教育を行っている学校を訪問し、それぞれのカリキュラム、その理念、授業実践及びその効果の調査を行った。その内、特にスイスジュネーブの小学校における言語意識教育では、多様な言語の音声や文字の識別能力や言語の多様性に対する態度の向上が報告されている。今回得られた資料を基に言語意識教育を来年度の我々のカリキュラムに組み込む準備を行っている。
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