本研究の目的は非常に多数の化学物質を同時に検出できる半導体センサのプロトタイプを開発することである。その基礎としてLight-Addressable Potentiometeric Sensor(LAPS)および半導体化学イメージセンサの原理を利用し、センサ面上に多くのイオン敏感膜等を集積し、各測定領域を独立に光照射することによって発生する光電流の大きさから各物質を検出・定量するシステムの開発を行った。本年度の研究実績は以下のようにまとめられる。 1.イオン画像測定を効率よく行うためのソフトウェアを新たに開発した。 2.測定対象の液体が微量である場合を想定し、マイクロ流路を有する半導体センサの試作を行った。厚膜レジストSU-8を用いて半導体センサ面上にマイクロ流路を作製し、流路内の任意の位置でイオン濃度測定が可能であることを実証した。流路が細くなると、電極からの距離によって溶液のインピーダンスの影響で信号が小さくなるという問題があったが、流路の上面を導電性にすることでこの問題を解決した。 3.このようにして作製した流路内の複数の点で同時にイオン濃度計測を行うため、異なる周波数で変調される複数の光源を用いた場合の信号処理方法について検討し、時間分解能・周波数分解能について考察を行った。 4.測定のためのセットアップを容易にするため、プラスチックカードにマウントされたセンサを試作した。測定対象ごとに異なるカードを用意しておき、必要に応じてカードを差し替えることによって各種測定に対応することができる。 なお、上記の研究実績のうち4は海外共同研究者Schoning教授との共同研究成果である。
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