研究概要 |
本研究の目的は、短鎖飽和脂肪酸(C12)であるラウリル酸のin vitro炎症メディエーター産生分子機構を明らかにすると共に、in vivoにおける炎症惹起作用を評価することでそのリスクアセスメントに寄与することである。本年度はまず、マウス腹腔マクロファージにおいて炎症メディエーター産生を増強することがすでに知られている、デキストラン硫酸塩(DSS)のinterleukin-1β(IL-1β)の産生分子機構を明らかにすることで、次年度、ラウリル酸のそれと比較することを目的とした。まず、ICRマウス雌の腹腔マクロファージを調製し、以下の知見を得ることができた。1)DSSは膜上に存在するケモカイン型受容体CXCL16(スカベンジャーレセプターの1種)に認識され、取り込まれる過程で活性酸索を産生する。2)生じた酸化ストレスは、ERK1/2およびp38 MAPK経路を活性化する。3)これらのシグナル伝達経路の活性化によって、caspase-1(IL-1βconverting enzyme)がpro-IL-1βと活性化型IL-1βへ変換する。これらの知見は、ラウリル酸によるシグナル伝達経路との比較に有効である。次に、これまで株化マクロファージ(RAW264.7)においてでしか報告されていなかった、ラウリル酸の炎症メディエーター産生をマウス腹腔マクロファージを用いて検討した。その結果、細胞を24時間ラウリル酸で処理した場合、培地中のIL-1βタンパク質濃度は、約10pg/mLであり、DSSやリポ多糖(LPS、E.coli由来)で刺激した場合とほぼ同等であった。また、C10、C14,C16の飽和脂肪酸ではこのような効果がなかったことから、この場合のIL-1β産生は、ある程度ラウリル酸に特異的であることが確認できた。
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