研究課題
食品およびその成分によるダイオキシン毒性抑制作用を評価するため、以下の三点について検討した。1.ダイオキシン毒性の初発段階を担うアリール炭化水素受容体(AhR)の形質転換を抑制する食品を検索し、抑制効果を示した食品を対象に動物細胞と動物個体を用いてその有効性を明らかにする。2.抑制効果が強かった食品から有効成分を単離・同定し、作用機構を解明する。3.AhRの形質転換を介したヘテロサイクリックアミンの発がん性に対する食品成分の抑制効果を明確にする。1については、これまでに明らかにした緑茶や紅茶がAhRの形質転換を抑制することを市販飲料で確認し、これら以外にも無細胞系においてはコーヒー、ココア、牛乳、赤ワインが、ヒト肝腫瘍由来HepG2細胞とラット正常肝由来RL-34細胞においては牛乳が有効であることを見出した。また、ココアの原料であるカカオ抽出物が動物実験においてAhRの形質転換を抑制することも明らかにした。2については、昨年度有効性を見出したモロヘイヤから有効成分の単離と同定を実施し、ルテインに構造が類似するキサントフィル様の化合物を単離し、構造解析を進めている。また、紅茶の有効成分として、テアフラビンが強い抑制効果を示すことを明らかにした。さらに、プロポリスの示す形質転換抑制効果は、その起源植物の樹脂抽出物のそれとほぼ同じであり、いずれにもフラボノイドが類似した組成で存在することを示した。一方で、フラボノイド類の一種であるアントシアン類は形質転換抑制効果がないことを動物細胞実験で確認した。3については、ヘテロサイクリックアミンの発がん性に関わるCYP 1AサブファミリーがAhRを介して発現誘導されることから、AhRの形質転換抑制成分が発がん性抑制に関わるが、これ以外にヘテロサイクリックアミンの処理によって生じる活性酸素を消去する抗酸化物質も有効であることを明らかにした。
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