研究概要 |
食品中の細菌は、貯蔵および加工中に種々のストレスを受け損傷している。損傷菌は選択培地で増殖させることが出来ないため、検出する際には栄養豊富な非選択培地で十分培養し、損傷から回復させる必要がある。しかし、回復に時間がかかり、回復が不十分であると菌数を過小評価してしまう恐れがある。本研究では食中毒菌を迅速かつ確実に検出するため、Salmonella enteritidis (SE)の加熱損傷菌を用いて、回復機構について検討した。 まず、種々のpH条件下で加熱して、SEの損傷菌(選択培地ではコロニー形成できないが、栄養豊富な培地ではコロニー形成する)の生成を調べた結果、pH6,55℃,10分間の加熱により損傷菌の生成率がもっとも高かった。この前後のpHおよび加熱温度条件では、損傷菌の生成率は低かった。この最適条件で加熱したSEの、非加熱、加熱直後、液体培地中で回復1時間目の菌体からそれぞれ調製した菌体の全タンパク質の2次元電気泳動を行い、回復時に特異的に発現する7種のタンパク質のスポットを見いだした。これらのうちの2種についてはN末端アミノ酸配列が決定でき、相同性検索の結果、タンパク質伸長因子およびピルビン酸キナーゼであることがわかった。 現在同様に処理した菌体から調整したtotal RNAから、RT-PCRによりEscherichia coliおよびS.typhimuriumで知られている、42種の加熱ストレス誘導遺伝子転写産物の検出を試みている。
|