研究概要 |
1,5-D-アンヒドロフルクトース(1,5-AF)を培地に添加することにより、枯草菌は芽胞の形成が顕著に抑制された。グルコースに比べ1,5-AFは緩やかに培地から減少した。水和した1,5-AFの構造はグルコースと類似しているため、グルコース同様菌体に取り込まれるがその分解速度が遅いと思われ、グルコース様の糖が存在するために芽胞形成が抑制される可能性が考えられる。それぞれの糖質を含む培地で培養した枯草菌の菌体内外に生産されるタンパク質を比較したところ、1,5-AFの存在によりいくつかのタンパク質が生産されなくなることを認めた。二次元電気泳動で認められたこれらの差のタンパク質を試みた結果、菌体内タンパク質では芽胞形成の第4ステージに機能するYqfD、σ^BファクターのポジティブレギュレーターRsbVが1,5-AFにより生産されなくなったことを認めた。また、菌体外タンパク質では、芽胞形成を開始するのに必須のオリゴペプチドABCトランスポーターの、芽胞のタンパク質の系統的なアセンブリーに必要なFtsYタンパク質の生産が認められなかった。1,5-AFはこれらのタンパク質生産を抑制する結果、芽胞の形成が抑制される。次に、健全な芽胞を調製しこれを発芽処理、あるいは菌体への復帰のための培養時に1,5-AFを加えると増殖が抑制されることについて解析を始めた。二次元電気泳動により芽胞のタンパク質を分離することを試みたが、再現性のある定量的な芽胞のタンパク質調製が大変困難であることがわかった。さまざまな方法を検討した結果、ガラスビーズとともに激しく振盪し物理的に破砕し、タンパク質を有機溶媒で沈殿精製する方法が現在のところ最良であった。この方法で調製したタンパク質を来年度精力的に解析する予定である。
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