研究課題
基盤研究(C)
プリオン病な正常プリオンの立体構造が変化した変性分子の一部が病原性を示す神経変性疾患である。変性分子のほとんどは感染性を示さず、いかなるコンフォメーションが病原性を示すのかは診断、治療法の開発とともに、タンパク質科学のきわめて重要な問題である。本研究では正常型プリオンタンパク質が感染性プリオンに変化する過程に出現するコンフォーマーをスナップショットするヒト特異抗体の単離を試みた。in vitroでβシート型構造にrefoldingしたプリオン(human PrP(23-231):β-PrP)を標的分子として、ヒト抗体を提示した抗体ファージライブラリーからβ-PrPに反応する抗体(2クローン)を作製した。これらの抗体を用いてWestern blotting解析を行ったところ、SDS-PAGE後のプリオン蛋白との反応性は認められないことから、単離した抗体は立体構造を認識する抗体であり、コンフォメーション特異的抗体であると考えられた。作製したβ-PrPの原子間顕微鏡解析を行ったところ、CDでβシート型吸収を示すβ-PrPはオリゴマーを形成していることが明らかとなった。オリゴマー一つあたりの大きさは約3.0nmであり、数十個のプリオン蛋白が会合したものと考えられる。上記の抗体を用いて、in vitroでrefoldingしたプリオン蛋白のコンフォメーション変化を経時的に調べた。refoldingが完了した日をday0とし、day4のβ-PrPを用いてELISAを行ったところ、β-PrPへの結合が認められた。一方、day14のβ-PrPでは、その結合シグナルが#7の抗体では約10倍、#30の抗体では約2倍に増加した。これらの結果は、プリオン蛋白のコンフォメーションが変化していることを示唆しており、コンフォメーション特異的抗体をプローブとすることで、変化の過程を追跡できることを明らかとなった。このようなコンフォメーション抗体を用いて、プリオン病発症に関連したコンフォーマーを同定できる抗体を選別することで、プリオン病の早期診断法が確立できると考えられる。
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Prions : Food and Drug Safety (Ed.T.Kitamoto)