研究概要 |
食中毒を起こす細菌やウイルスを早期に(短時間で)、簡単に(検体を加えるだけで)しかも多検体検出・鑑別診断できることが、食の安全確保において、また予防・治療を行う上で重要である。この目的のために、種々の細菌およびウイルスに対する単クローン抗体を作製し、その抗体を利用してELISA法、イムノクロマト法あるいはプロテインチップ法などによる迅速・簡便診断法の開発を試みた。 1.各種食中毒原因微生物に対する単クローン抗体の樹立 現在までに、以下の微生物に対する単クローン抗体を得ることができた。 (1)ベロ毒素に対する抗体:21クローンを得た。このうち5クローンはベロ毒素VT1およびVT2を認識する抗体であった。 (2)大腸菌に対する抗体:13クローンを得た。うちひとつは毒素原性大腸菌の産生する易熱性毒素(LT)に対する抗体と考えられた。 (3)サルモネラ菌に対する抗体:14クローンが得られたが,診断に有用な抗体ではなかった。 (4)カンピロバクターに対する抗体:5クローンが得られた。菌体のある一部に対する抗体と思われるが、現在検討中である。 (5)黄色ブドウ球菌に対する抗体:6クローンが得られたが,うち4クローンはエンテロトキシンに対する抗体と考えられた。 (6)セレウス菌に対する抗体:2クローンが得られたが、ひとつは、セレウス菌由来のホスフォリパーゼCに対する抗体であった。この抗体はウエルシ菌由来のホスフォリパーゼCとも反応することが分かった。今後はセレウス菌およびウエルシ菌特異的な抗体を得る必要がある。 上記未検討の抗体については現在解析中である。また、腸炎ビブリオおよびウエルシ菌については現在作成中である。 2、迅速簡便診断法の開発 ノロウイルスに対する抗体は樹立し、すでに迅速簡便なELISA法をすでに開発している。現在は、イムノクロマト法あるいはプロテインチップに応用できないか検討中である。 今後、上記の樹立された抗体の有用性を確かめ、体系化された食中毒の鑑別診断法の確立する予定である。
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