研究概要 |
睡眠時間が6時間以下の人々を短時間睡眠者(Short sleeper),9時間の以上の人々を長時間睡眠者(Long sleeper)と呼ぶ。従来から、Short sleeperとLong sleeperの性格傾向、行動様式には対照的な特徴があると言われてきた。このような特徴が先天的な要因によるものなのか、あるいは後天的な要因によるものかを精神生理学的に、分子生物学的に検討する。本年度は睡眠時間と性格傾向、行動様式の関係を検討するために,以下の2つを行った。 (1)睡眠時間の長短が人間のどの様な行動特性に関与しているかを、睡眠の数学モデ(Two process model)を用いて推定を行った。 この結果、睡眠時間の長短に大きく関与する要因として、昼間の疲労が蓄積されてゆく過程、疲労蓄積過程が重要であることが判明した。この過程で、短時間当たりの疲労(疲労度)が少ないと、入眠時刻が遅くなり、起床時刻がそれほど変化しないので、結果的には睡眠時間は短縮した。疲労度をさらに小さくすると、睡眠時間がさらに短縮し、睡眠相が遅延する傾向が認められた。このような事が、生活習慣のような後天的要因によるものなのかあるいは先天的なものなのかをヒトの実験で検証してゆく。 (2)10名の健康な男子大学生を対象に、睡眠の特性、性格傾向、そして行動様式を精神生理学的に検討した。(1)で推定された昼間の疲労度に注目し、精神的な緊張度の高い人とそうでない人では昼間の精神機能や睡眠がどの様に異なるかを検討した。現時点で10名の実験が終了し、分析が終了したものが5名である。この5名に関して推定すると、昼間の精神的緊張が高い被験者は夜間の睡眠の構造に大きな影響をもたらす可能性があることが推察された。今後、分析を進めて検討を行う予定である。
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