H16年度において、睡眠の数学モデルによって、睡眠時間が昼間の行動と密接な関係にあることを推定した。H16年度から17年度にかけて、15名の被験者に睡眠日誌と行動量計(アクチグラフ)を約2週間記録してもらい、彼らの自覚的な睡眠覚醒リズム(SWR)と活動休止リズムを測定した結果、睡眠時間が6時間以下のshort sleeperでは、昼間の活動量が常に高かかった。これに反して9時間を超えるlong sleeperの昼間の活動量は変動が大きく、short sleeperに比べて低かった。17年度から18年度にかけて、企業の中高年(38才〜59才)のビジネスマンに対して、睡眠時間が比較的短い6名を選び、彼らに睡眠日誌、アクチグラフ、そして睡眠ポリソムノグラフ(PSG)等を3夜連続で記録した。その結果、平均睡眠時間が5時間半以下のshort sleeperが2名、6時間前後が2名であった。5時間以下の者はPSGにおいて、REM睡眠の持続が悪く、REM睡眠中に睡眠紡錘波が混入していた。これは、精神的なストレスが過多であることを示す。また、性格傾向を質問法(YGテスト)で検討した結果、short sleeperとlong sleeperの間には大きな差異は認められなかった。しかし、面談による被験者の性格傾向としてshort sleeperは快活であり、long sleeperは物静かな印象を強く受けた。 以上の3年間の結果から、short sleeperの行動上特徴として、昼間の活動量が常に高いこと、中高年ではREM睡眠の持続性が低下しており、精神的なストレス過多にある可能性が高いことが明らかになった。今後、平均睡眠時間が5時間前後でしかも昼間の活動量が高く昼寝の習慣がない群を選び出し彼らの遺伝的な特徴を検討してゆく。特に昼間の活動を高くするような性格に関与する遺伝子の同定を試みる。
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