研究概要 |
眠気には,心理的尺度で評価される前頭連合野由来の眠気,睡眠潜時反復検査(MSLT)で評価される睡眠機構由来の眠気,覚醒維持検査(MWT)で評価されるorexin/hypocretin欠乏等により生じるナルコレプシなどの覚醒維持機構由来の眠気に大別できると.MSLT,MWTとも脳波,眼球運動,筋電位の測定を必要とし,判定にも高度な専門的知識が要求される.このような理由から,眠気の研究は国際的にも大きな進展が見られていない.行動科学分野で使用される入眠期の持続的パタン押し行動を用いた行動的入眠潜時の計測は,簡便であり判定も自動化でき広範囲な使用が期待できる.平成16年度の研究では,行動的入眠潜時とMSLT,MWTおよび心理的眠気評価との関係を明らかにすることを目的として実験行った. 年度当初に,コンピュータ応用型自動判別方式の行動的入眠潜時測定用システムを開発した.研究内容を十分に説明し同意の得られた健常男女12名(21.9±0.8歳)を対象として,就寝時45分,起床時45分の計90分間睡眠時間を短縮した部分断眠後に,CT10時,CT14時の計2回,行動的入眠潜時検査(BSLT),睡眠潜時検査(SLT),覚醒維持検査(MWT)を行った.行動的入眠潜時と脳波的入眠潜時について,午前・午後,MWT・SLTを合わせた相関を求めたところ,vertex sharp wave期では有意な相関が見られたが,θ波期潜時とは有意な相関は見られなかった。時刻および実験条件で検討したところ,午前のMWTでの相関がもっとも強く,逆に午後の時間帯ではMWT・SLTともに相関は認められなかった.覚醒へのモチベーションの有無や時刻によって,脳波的・行動的な入眠潜時に乖離が生じ,それに法則性のあることが明らかになった.
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