研究概要 |
本研究には最終的に30施設が参加し、2000年〜2002年の間の初回経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス手術(CABG)施行例を登録・解析した。平成17年度には、前年度に続き症例の登録を行い、対象となる症例のうち、大部分の登録と初回の予後追跡調査を終えた。研究期間終了までの登録症例の中でCABG施行の際に合併手術を行った症例を除く8,647症例のうち、糖尿病合併症例は3,350症例であり、さらに、75歳未満で左冠動脈主幹部病変を持たない多枝冠動脈疾患患者1,741例をPCIとCABGの血行再建法の違いによる予後の比較・解析の対象とした。また、糖尿病合併症例全体をインスリン治療群と非インスリン治療群に分け、初回冠血行再建術後の独立した予後を比較した。 PCIとCABGの間で施行後3年間のイベント回避率を比較した場合、死亡、脳血管障害、主要心血管イベント(死亡+脳血管障害+心筋梗塞)には差がなかったが、心筋梗塞(p=0.03)、再血行再建術(p<0.0001)に関してはCABG群のほうが回避率が高かった。他の主要な交絡因子を含めた多変量解析を行ったところ、腎機能障害などが独立した強い予後規定因子となるのに対し、冠血行再建法はCABG群で予後が良い傾向を示すものの有意な予後規定因子にはならなかった。 インスリン治療の予後への影響に関しては、単変量解析ではインスリン治療群は非インスリン治療群に比べ罹患枝数を問わず予後不良であったが、腎機能障害や心不全の既往などと多変量解析を行うと、インスリン治療は独立した予後規定因子ではなかった。 本研究結果では、糖尿病合併多枝疾患の血行再建法の違いは生命予後には重大な影響を与えないが、再血行再建術の頻度はCABGが有意に低いという結果が得られたが、薬剤放出性ステント使用下での同様の研究が今後必要であろう。
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