研究概要 |
脳血管障害の発生に関与している遺伝素因解明のために、脳動脈硬化の危険因子として、生体内の酸化ストレス亢進と一酸化窒素(NO)レベルの減少に着目して解析を行い、脳室周囲の白質変性にこれらの危険因子が重要な役割を演じていることを平成16年度の研究で明らかにしてきた。今年度は、一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性を阻害する働きがあるADMA(N,N-dimethyl-L-arginine)の血中レベルの測定法の開発に関する研究を行った。 これまで、ADMAの測定にはHPLCを用いた測定法が用いられてきたが、検体の測定前処理の手技が煩雑であることから、多検体の測定は困難であった。そこで、今回、複雑な前処理を行わずに、カラムスイッチング-ポストカラム反応HPLCを使用して、ADMA、および、その異性体であるNMMA(N-monomethylarginine)とSDMA(N,N'-dimethyl-L-arginine)を、同一検体を用いて同時に測定できる方法を開発した。分析カラムには、ODSカラムTSKgel ODS-80TsQA(4.6mmI.D.x25cm)を使用し、前処理カラムには、陽イオン交換カラムTSKgel SP-2SW(4.6mmI.D.x6cm)(いずれも東ソー(株)製)を使用した。溶離液には、イオン対試薬としてオクタン酸を添加したリン酸緩衝液を使用し、溶離液条件、分析カラム、前処理カラム等について検討を行い、最適化を行った。試料注入からカラムの洗浄工程も含めて、1試料あたり、30分以内での測定が可能であった。また、検量線の直線性、再現性、回収率について、いずれも良好な結果が得られた。ヒト血漿サンプルの測定を行ったところ、従来法との測定結果の相関も良好であり、今後、この方法を応用して、多検体測定の可能なシステム作りをすすめている。
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