研究概要 |
平成17年度末現在、本研究課題の実績概要は以下のとおりである。 (1)簡易インスリン抵抗性評価法の構築について 本年度は、正常血糖高インスリンクランプ法によるインスリン抵抗性指数(ClampIR)の評価症例をさらに増やし、既報の簡易インスリン抵抗性指数であるHOMA-IRおよびインスリン抵抗性の血液パラメータの新規指標としてのfetuin Aについて検討した成果を報告した(Diabetes Care 29:468,2006)。Fetuin Aは、インスリン受容体チロシンキナーゼ活性阻害する糖タンパクであり、基礎的研究よりインスリン抵抗性との関連が示唆されている。グルコースクランプ施行例の2型糖尿病161例、対照群として健常者160例において、血清Fetuin AをELISA法により測定した。Fetuin Aは、健常者では、HOMA-IRと弱い有意な単相関(r=0.197,P=0.014)、BMIで調整した重回帰分析においてもHOMA-IRの独立した寄与因子(β=0.197,P=0.004)であった。一方、糖尿病では、HOMA-IR (r=0.010,P=0.909)および、ClampIR(-0.068,P=0.410)とは有意の相関を認めなかった。 (2)動脈硬化症の発症進展予知について これまでに動脈硬化症を評価しえた症例において、まずインスリン抵抗性を強く反映する血液パラメータとして血漿アディポネクチン濃度と動脈硬化症との関連性について検討し報告した(Metabolism, 2006.In press)。2型糖尿病98例および健常者116例では、血中アディポネクチンはStiffness index betaと有意の負単相関(r=-0.189,P=0.006)を認め、重回帰分析においても独立した寄与因子(β=-0.232,P=0.020)であったことより、インスリン抵抗性のマーカであるアディポネクチンは頸動脈硬化症の予知マーカとしての可能性が示唆された。頸動脈硬化症の進展をフォロウアップできた184例において、観察開始時のHOMA-IR、ClampIRとIMTの年間進展度(ΔIMT,mm/year)との関連を検討した。ΔIMTは、HOMA-IRと(r=0.090,P=0.047)、ClampIR(r=-0.306,P=0.035)と弱い有意の相関を認めた。現在、さらに症例数を増やし、多因子の影響などの調整、また、Stiffness index betaでの検討について解析中である。
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