研究概要 |
メモリーTh2細胞の研究が困難であるのは、抗原特異的なメモリーTh2細胞を大量に得るのが難しいことが一因としてあげられる。そこで、申請者はin vitroで抗原特異的なエフェクターTh2細胞を抗原特異的TCRトランスジェニックマウスから分化誘導し、それをマウスに移入することで大量(1x10^8レベル)のメモリーTh2細胞を調製する方法を開発した。本研究では、この方法を用いてアレルギー性疾患の病態形成におけるメモリーTh2細胞の役割を、アレルギー性気道炎症のモデルで検討した。 本年度は、(1)メモリーTh2細胞分化を制御している転写因子の新規同定、および、(2)これまでに同定した因子の機能解析を行なった。(1)については、メモリーTh細胞に高発現するEts型転写因子SpiCが、末梢のCD4T細胞の生存維持に必要であるという結果を得て、トランスジェニックマウスおよび欠損マウスの作製を行なった。現在、これらのマウスの表現系の解析を行なっている。また、エフェクターTh2細胞で高発現している転写抑制因子Gfi1が、メモリーTh2細胞分化を負に制御していることも見いだし、欠損マウスを用いた研究を開始した。(2)については、ヒストンメチル基転移酵素のMLLがメモリーTh2細胞におけるTh2サイトカイン産生の維持およびメモリーTh2細胞によるアレルギー性気道炎症の誘導に必要であることを明らかにした(論文投稿中)。また、Th2細胞の機能維持において重要であるGATA3蛋白の発現が、ERK-MAPK経路によりユビキチン/プロテアソーム系を介して制御されていることを示した(J.Biol.Chem.280:29409,2004)。さらに、加齢に伴うTh2細胞分化・維持能の変化についても解析を行ない、新しい知見を得た(J.Immunol.176:2546,2006)。
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