本研究では、慢性的なアレルギー性気道炎症によって誘導される組織修復異常(気道リモデリング)における好酸球由来TGF-β1の意義を明らかにすることを目的とする。2年目に当たる本年度は、昨年度に検討した抗TGF-β1抗体によるアレルギー性気道炎症の増悪機序を検討する目的で、感作マウスの脾細胞を抗原刺激した際のサイトカイン産生を検討するための実験系の確立を試みた。また、卵白アルブミンと水酸化アルミニウムゲルを用いて能動感作を行う、本モデルにおいて得られた昨年度の成績の普遍性を確認する目的で、新たに水酸化アルミニウムのようなアジュバントを使用することなく、ダニ抗原をマウス気管内に反復投与することにより、アトピー型喘息モデルの作製および気道リモデリング形成の機序を検討した。 卵白アルブミンとアラムによって能動的に感作したマウスの脾細胞を抗原によって刺激することにより、培養上清中に抗原の濃度に依存した、また、時間経過に依存したIL-4、IL-5、IL-13ならびにIFN-γの産生が観察された。今後、培養上清中のTGF-β1ならびにIL-10産生量を検討し、抗原曝露期間中の経時的な産生量の変化を検討する予定である。 一方、ダニ抗原(Dermatophagoides farinae)をマウスの気管内に投与することにより、その投与量に依存した気道過敏性、気道内好酸球増多、気道上皮における杯細胞の過増生・肥厚ならびに基底膜下の線維化形成が観察された。これらの変化は、いずれもIL-4受容体α鎖遺伝子欠損マウスでは観察されなかったことから、Th2依存的な反応であることが明らかとなった。また、本モデルで観察される表現系は、ステロイド薬の局所投与により有意に抑制された。今後、上述の卵白アルブミンによる慢性喘息モデルと同様に、ダニ喘息モデルにおける基底膜下の線維化形成の機序を検討し、好酸球由来TGF-β1の普遍性を明らかにしていく予定である。
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