大気汚染粉塵の曝露モデルとして、代表的な固定発生源からの大気汚染粉塵である石油燃焼灰燼(ROFA)溶出液(50mg/ml)のエロソール曝露を用いた。正常妊娠マウス(BALB/c)の出産5、3、1日前にROFA溶出液をエロソール曝露し、出生した仔マウス(ROFA曝露群)に対し、生後3日に卵白アルブミン(OVA)+alumを腹腔内投与により感作し、その後第12〜14日齢ならびに32〜34日齢に抗原溶液をエロソール曝露して喘息病態を評価した。正常の無処置母親マウスならびにROFA曝露の対照としてもちいたPBS曝露母親マウスから生まれた仔マウスは、生後3日の1回のみの抗原感作ではその後の抗原曝露によっても著しい喘息病態を示さないが、ROFA溶出液曝露群では気道過敏性、気道組織の好酸球浸潤を伴う炎症像、気管支肺胞洗浄液中の著しい好酸球増多、抗原特異的IgEならびにIgG1産生をきたし、妊娠中の大気汚染粉塵曝露が出生後の仔マウスの喘息感受性を亢進することが示された。 機序に対する検討として、一般に出生後には胎児期および出生児のTh2優位な免疫状態が出生後数日でTh1優位にシフトするのに対してROFA曝露群ではTh2優位の状態が遷延することが認められた。また、養子哺乳実験によりこの状態が母乳などの影響ではないことも認められた。ROFA曝露が母体の免疫状態に介入し結果として胎児の免疫様態に影響したのか、曝露の影響が直接胎児におよんだのかは不明であり、さらにROFA溶出液に含有される金属の経胎盤的な胎児への移行の影響が考えられたが、金属溶液のみの曝露では仔マウスに同様の喘息病態を容易に表現させることはできなかった。 機序に対する検討ならびに、このモデルを用いて仔マウスの免疫状態への治療的介入に対する検討を予定している。
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