マスト細胞活性化を制御するPTP-PESTとPTPεのマスト細胞活性化における分子機構の解明を目指して研究を進めた。 1 PTP-PESTによるマスト細胞活性化の制御 PTP-PESTの野生型、活性中心に変異を加えた基質トラッピング型をレトロウイルス発現系でラットマスト細胞株RBL-2H3細胞に導入後、ソーティングにより得た導入細胞を用いてPTP-PESTの機能を解析した。これまでにPTP-PESTはFcεRIシグナルで誘導される脱顆粒には関与しないが、TNFαの産生を正に制御すること、初期のタンパクのチロシンリン酸化には関与しないが、カルシウム反応、MAPキナーゼ(ERKとJNK)の活性化を制御することを明らかにしている。今回PTP-PESTの結合蛋白を解析した結果、トラッピング型PTP-PESTにFcεRI架橋後2つの分子(110kDa、65kDa)が結合すること、また酵素領域非依存性に60kDaの蛋白がFcεRI架橋後に結合することが明らかになった。これらの蛋白はPTP-PESTの機能に重要な役割を担っている可能性があり、現在その同定を進めている。 2 PTPεによるマスト細胞活性化の制御 PTPεは一つの膜結合型と3つの細胞内型アイソフォームを持つ。PTPεノックアウトマウスと野生型マウスの骨髄由来マスト細胞を用いてFcεRIシグナルにおけるPTPεの機能を解析した。その結果、PTPεはレセプター架橋後の総蛋白のリン酸化には影響を与えないが、カルシウム反応、MAPキナーゼのJNK、p38の活性化、脱顆粒およびサイトカイン発現のいずれの過程をも負に制御すること、生体内におけるマスト細胞分化には関与しないこと、さらに受身全身性アナフィラキシーを負に制御する酵素であることが明らかになった。現在PTPεの標的分子を解析している。
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