研究概要 |
本研究では、本邦におけるアレルギー疾患発症に関わる環境因子の疫学調査と、環境因子のアレルギー疾患発症抑制の機序の解明(基礎研究)から、アレルギー疾患の発症しにくい環境の提言と、アレルギー疾患の発症予防ワクチンの開発のための基礎的検討を行うことを目標とする。 疫学研究:広島市の全小学2年生の保護者を対象として、質問紙法を用いたアレルギー疾患の発症の有無と生育歴、生育環境に関する調査を行った(対象児童数11,163名、有効回答数9,975、有効回答率89.4%)。この成果として、1.本邦でも年長の同胞数はアレルギー疾患の発症に逆相関する(Hygiene Hypothesis)、2.乳幼児期の抗生剤投与はアレルギー疾患発症のリスク要因となる、3.妊娠中の特定の食物の除去はその食物に対するアレルギーを軽減せずかえって増加させる、4.妊娠中のファストフードの摂取はアレルギー疾患増加に関与していない、等の疫学的事実を明らかとした。これらの内容のアレルギー学会等での報告は多くのマスコミからも注目され、また厚生労働省食品安全部会からも資料の請求があった。基礎研究:正常満期産の臍帯血を用いて、TLRのligandであるpeptidoglycan、Poly I:C、lipopolysaccharide、CpG含有oligonucleotideによる刺激で誘導される遺伝子群を網羅的に解析し、成人末梢血の反応(平成16年度に検討済み)と比較した。その結果、刺激による臍帯血単核細胞のIFN-gamma産生は気管支喘息成人患者と同等であるが、健常成人よりは低く、生下時のTh2応答が持続した症例がアレルギー患者となる可能性が示唆された。また本邦のBCGはin vitroではIFN-gamma産生を誘導しなかった。今後は臍帯血単核細胞にregulatory T細胞応答を誘導できる刺激を探索する予定である。
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