研究課題/領域番号 |
16639014
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 雅夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30163570)
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研究分担者 |
笹月 健彦 国立国際医療センター, 総長 (50014121)
高後 裕 国立大学法人旭川医科大学, 医学部, 教授 (10133183)
松野 正紀 国立大学法人東北大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80004737)
税所 宏光 国立大学法人千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10092058)
乾 和郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教授 (20247638)
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キーワード | IPMT / 膵癌 / 多臓器癌 / DNA多型マーカー |
研究概要 |
IPMTには膵癌の発生とともに極めて高頻度に他の悪性腫瘍が合併することが報告され、この疾患には膵発癌機構に加えて種々の臓器発癌に関連する遺伝要因が存在することを強く示唆されている。そのため、我々は、IPMTの遺伝要因を同定するために、DNA多型マーカーを用いた全ゲノムスキャンによる網羅的相関解析を計画している。本調査はIPMTの遺伝学解析を前提とし、IPMT患者における発癌状況と遺伝的素因について検討を加えたものである。 IPMTの診断は、外科切除組織における病理診断とERCPによる粘液の存在によって行った。平成17年3月11日までに全国から集計し得たIPMT症例は357例であった。このうち、悪性腫瘍を同時性あるいは異時性に認めた症例は78例、21.9%であった。また、このうち17例、21.8%は複数の悪性腫瘍を認める多臓器癌であった。IPMT症例の同胞は、1275例であり、このうち悪性腫瘍を有する症例は116例、9.0%であった。日本人の癌罹患率は0.6%であり、IPMT症例ならびにその同胞において明らかに高い癌罹患率を呈していた。また、IPMT症例における癌罹患率は同胞における罹患率よりも有意に(p<0.0001)高かった。両親における悪性腫瘍は146例、20.4%に見られた。 以上の解析結果から、IPMTには易発癌性の遺伝的素因があることが明らかとなった。従って、IPMT症例を対象としDNA多型マーカーを用いて遺伝要因解析を行うことは、難治癌である膵癌発生に関連する新規遺伝子を同定し、膵癌の診断や治療に新しい可能性を開く緊急性の高い研究になることが示された。 本調査は今後さらに症例集積を重ねた後、詳細な疫学的検討を行って英文誌に投稿される予定である。
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