研究概要 |
本年度は,互いの分野の「言葉」,「概念」を把握することから始めた.6月には分担者の山本が都立大学を訪れ「計算論的学習の周辺」という題目の講演を行った.7月には,徳永,小林が京都大学を訪れ,「学習可能性」について討論を行った. その後,山本は,「山崎,青柳,渡辺らによる情報論的学習理論において利用されたトーリック多様体,より厳密にはトーリック超曲面,の特異点解消の手続きに計算論的学習理論からの意味付けが与えられるのではないか?」という問題に気づいた.11月以降は主として,上記問題について,京都大学及び東京都立大学で討論を繰り返した. 当初は,トーリック特異点解消を明示的にあたえる岡の方法(On the Resolution of the Hypersurface Singularities, Advanced Studies in Pure Mathematics, vol8(1986), 437-460)に注目した.小林を加えた討論の結果,その部分は「アルゴリズム」で「正データからの極限同定」とは異なることがわかった.計算論的学習が潜んでいたのは,岡のアルゴリズムをスタートさせるために考える「ニュートン図形」と呼ばれる概念であった.ニュートン図形を描くプロシージャについてさらに調べていくうちに,ニュートン図形を極限同定するキーポイントはGroebner基底の理論でも重要な役割を果たしているDicksonの補題と下方集合の極限同定であることがわかった.これらに成果については 「ニュートン図形の極限同定と複素超曲面の特異点解消」 というタイトルで発表予定である. 上記の研究を通して,正データからの極限同定できるような代数幾何の対象は,Ascending Chain Conditionとそのterminationが含まれてるのではないかという視点を得た.そのようなものがすべてDicksonの補題と下方集合の極限同定で説明できるかどうかを考察するかはこれからの課題である.
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