研究概要 |
本研究の目的はブール環特有の計算手法を積極的に利用した帰納推論方式を構成である.本年度は,(1)環論と帰納推論の関係解明を展開するとともに,(2)イデアルの束論的な特徴である下方集合を積極的に用いたサポート・ベクトル・マシンの研究をさらに推し進めた. (1)については,昨年度は,極限同定学習における概念空間とイデアルの束論的な特徴の関係について検証を行ったが,本年度はさらにその結果を展開し,正データからの極限同定学習可能性の十分条件という形で定式化することに成功した.すなわち,イデアルの束論的性質は「有限の弾力性」という性質を満たしていることを示した.この条件は正データからの極限同定学習可能であるための十分条件ではあるが必要条件ではないため,環という代数構造は,学習可能性に対して,より強い条件を自然に導いていることになる. (2)については,ブール値データに対するサポート・ベクトル・マシンにおける内積を計算する関数(カーネル関数)がブール値ベクトルのなす下方集合の最大元の計算に一致していることを明らかにしたが,本年は,それをブール値データ以外の完備束をなすデータを対象としたカーネル関数に一般化した「説明カーネル」を定式化した.そして,述語論理の項(木)構造データを対象とした具体的な説明カーネルの計算手法を開発し,そのカーネルが,従来の木構造データに対するカーネル(合成積カーネル)とは異なることを考察した.
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