研究概要 |
本研究では,誤差を離散化誤差と観測誤差とに区別して扱うという着想に基づき,離散化誤差が存在することを前提として,幾何特徴に関する多視点画像間の関係を明らかにし,3次元復元に応用することを目的としている.本年度に得られた成果は,以下の通りである. 1.離散エピポーラ幾何の構築と3次元復元への応用:画像を画素によって離散化された平面として捉え,連続空間での定式化に立脚するエピポーラ幾何に現れる諸概念を離散の立場から数学的に再定義することによって,離散エピポーラ幾何を構築した.具体的には,視線錐,離散エピポーラ面,離散エピポーラ線の概念を導入し,その数学的な定義を与え,それらを求める手法を考案した.さらに,離散エピポーラ幾何を3次元復元に応用する実験を行い,画素を単位とした3次元復元について検討を行った. 2.量子化誤差を考慮した3次元形状復元:距離画像センサで物体表面の3次元形状を計測する際には,量子化誤差のため,観測可能範囲であってもセンサの位置と姿勢に依存して物体面上の同一の点を計測することができないという問題がある.そこで,本研究では,各計測点に対して距離画像上での近傍領域内に含まれる計測点から構成される局所的な面を考え,この局所的な面を扱うことで量子化誤差の問題を避けて距離画像の位置合わせを実現する手法を開発した.合成画像や実画像を用いた実験により,従来手法に比べ,正確で頑健な位置合わせを実現し3次元形状が復元できていることを確認した. 3.離散曲面の局所的な点配置の解析:画素を最小単位とした3次元形状復元・解析では,3次元空間を離散的に扱う必要がある.そのような3次元離散空間では,トポロジーを導入することにより,3次元物体の境界を離散曲面として表現することができる.本研究では,組合せ位相構造を利用することにより,離散曲面の局所的な点配置は有限個に限られ,その数は比較的少ないことを示した.また,幾何学的形状解析には,それらの点配置が有用であることを示した.
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