研究課題/領域番号 |
16650049
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研究機関 | (財)国際科学振興財団 |
研究代表者 |
河合 徳枝 (財)国際科学振興財団, 研究開発部, 主任研究員 (50261128)
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研究分担者 |
大橋 力 国際科学振興財団, 研究開発部, 理事・主席研究員 (90015652)
八木 玲子 国立精神・神経センター, 神経研究所疾病研究第七部, 研究員 (80281591)
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キーワード | 環境音 / 音響周波数スペクトル / 非定常音響構造 / ストレス / 犯罪 / 暴力 / 生理的指標 |
研究概要 |
家庭内暴力、学校内暴力あるいは駅や列車内などの公共の場での衝動的な犯罪や暴力が著しく増加している。一方私たちは、情報環境学の立場から、情報環境が人間に与える生理的影響について研究を続けている。私たちは、人工性の高いある種の構造をもった音が衝動的行動やうつ状態に関係する脳の基幹部の血流を低下させることや、あるいは自然性の高い環境音やそうした環境音と音構造の近似した楽器音などが、人間を生理的に快適な状態に導くことをいくつかの生理指標で発見している。犯罪・暴力の一般的増加現象は、人間ひとりひとりの個別的なストレス要因とともに、現代人の情報環境における一般的なストレス要因の増加の可能性について検討する必要があろう。私たちは、現代人の情報環境の中で、空気振動としての音が人間にとって常に受容され環境化している要因のひとつであることから、きれやすい傾向を生理的に導く要因のひとつとして音環境に注目することとした。 昨年度、いくつかの音環境を収録しその構造を検討した。例えば東京の駅前商店・住宅密集地域では、音の周波数構造は、10kHz程度まででそれ以上の高周波成分は皆無であり、定常的で音響振動構造の複雑な変化は見られなかった。一方熱帯雨林の環境音は、150kHz以上に及ぶ超高周波成分を豊富に含み、非定常で周波数構造の形状が微小時間内で多様に変化し、複雑・変容性の大きい音響振動構造をもっていた。 本年度は、それらの音響資料を編集し、それを呈示刺激としてその有効性と実験手法の検討のために、数人の被験者による予備実験を行った。脳波α波並びに血中生理活性物質の濃度変化を計測したところ、呈示した音刺激の違いによって、脳波α波及びアドレナリン、コルチゾールの濃度が変化することが見出された。音環境の違いが、人間の生理的状態をよりきれやすい状態あるいはより安静な状態に導く可能性があることの手がかりを得た。
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