生成文法理論や認知言語学に代表される現代の言語の認知科学は、研究の対象である知識としての言語の性質を(自然)科学の方法を用いて解明しようとする試みである。そこでは、資料の収集、事実の(暫定的)認定、理論の構築、予測にもとづく理論の検証、理論の修正または廃棄という科学研究における一般的過程が実現されている。 本研究は言語の認知科学の持つこの側面を利用して、これまで物理・化学・生物などの学科目の枠内で行われてきた科学の方法の教育を行う可能性を検討しようとするものである。 本年度の研究概要はつぎのとおりである。 1 言語理論関係の教科書、入門書、諸論文を調査し、言語事実が明確で、分析のための議論の構造が比較的単純ですむ言語現象を選び出した。その際、学習者の母語である日本語の直感が活用できるよう日本語の現象を重視するとともに、日本語とは異なった構造特性を示し、かつ、学習者にとっては外国語であるが故に客体化しやすい英語の現象にも注意を払った。 2 とりあげるべき言語現象の候補のリストをもとに、その分析と配列を決めた。 3 つぎに、配列された言語現象とその分析をどのように呈示するかを決定した。 4 麗澤中学校において予備実験授業を行った。 研究の成果の一部は、2004年3月26日に、文京シビックセンターで開催された(主催 日本学術会議「若者の科学力増進委員会」、(独)科学技術振興機構)において、「ことばから見た心のしくみ」と題する講演(デモンストレーションを含む)において公開し、公表を得た。 来年度は、上記1-3の作業を継続するとともに、実験授業での実践を重ねる予定である。
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