研究概要 |
無作為標本の実現値に基づいて,母数に関する有限個あるいは無限個の命題の中から結論を選ぶ問題を多重決定問題という.特に母数空間【○!H】が2つに分割されている場合が仮説検定問題になる,一般には【○!H】の分割{【○!H】_λ|λεΛ}が与えられているとき、母数θがどの【○!H】_λに属しているかを決めることが問題になり,特に【○!H】_λが一点集合とすれば,母数推定問題になる.本研究では,まず,正規母集団分布N(μ,σ^2)を考え,その平均μの符号の問題,すなわち【○!H】=IR^1とし,【○!H】_1:={μ|μ<0},【○!H】_2:={μ|μ=0},【○!H】_3:={μ|μ>0}として,μがどの【○!H】_λ (λ=1,2,3)に属するか定める問題を考えた.そして,μの各符号について【○!H】_λと決定したときの損失を与えた.このとき,(i)σが既知の場合に,N(μ,σ^2)からの大きさnの無作為標本の平均に基づく多重決定方式φのリスクを計算し,それはρ=:μ/σの関数R(ρ,φ)として表された.次に,(ii)σが未知の場合には,自由度n-1,非心度√nρの非心分布に従う統計量Tに基づく,多重決定方式φ_TのリスクR(ρ,φ_T)を計算した.さらに,いくつかの損失関数について(i)の場合には,水準0<α<1/2において,^<sup>ρ>0 R(ρ,φ)=R(0,φ)となるα=α^*を求め,(ii)の場合には,^<sup>ρ>0 R(ρ,φ_T)=R(0,φ_T)となるα=α^*を求めた.その結果からα^*がほぼ0.05または0.01となるような損失関数を見つけることができた.本年度の研究では,μの符号のみを考えたが,信頼域に対応するように,もっと母数空間の細かい分割の場合に拡張であり,また,正規分布だけでなく,もっと一般の分布の母数について多重決定問題を考えていきたい.
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