本研究では、以下の1)〜4)に焦点をあて、名簿がない場合の個人標本抽出法の方法論的展開を進めている。 1)割当法の考え方と確率標本法の計測可能性を踏まえ、個人名簿がない場合の個人標本抽出法の理論的枠組を構築する基礎研究を重点的に展開する。 2)既存の標本抽出法と比較しながら、抽出名簿がない場合の個人標本抽出法を提案し、小規模の実験的な意識調査の遂行によってその統計学的特性を方法論的に明らかにする。 3)厳格な標本調査法に則った調査データに基づき、提案する標本抽出法の母集団に対する推定の精度、標本誤差および非標本誤差などの諸問題を統計的に分析する。 4)調査地点において作成した住宅配置図や名簿を基に、世帯標本と個人標本を統計的に無作為に抽出するための効率的な個人標本抽出法をまとめる。 今年度は、方法論的枠組を構築するために、特に以下の1)〜3)を重点的に遂行した。 1)これまでの社会調査および標本調査法に関する研究文献をもとに、抽出名簿がない場合の社会調査環境を分析し、それに適応した標本抽出法の統計学的検討を実施した。 2)研究集会、研究打合せを通して、住宅地図を用いた標本抽出の可能性を検討し、新しい標本抽出法の構想を完成した。 3)実証的な意識調査の内容を環境意識とした上で、調査項目の候補、計測尺度の選定、調査票の構造などの検討を重ね、来年度に予定している調査の準備を着実に進めてきた。 なお、調査候補地の調査環境確認、標本抽出の実践的検討、調査票の最終案の決定はほぼ修了した。
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