研究課題
線虫行動のデータベースを作成するために、種々の条件下における線虫行動を観察・記録するための装置を整備した。その装置を用い、行動を縮約して表現するパラメータを決定することを試みた。まず典型的な線虫の外的環境に対する応答である温度走性について厳密な空間勾配を作成する方法を考案し、実際にそのような温度勾配が再現性よく作成できることを確認した。また線虫行動を連続記録するための計測系(ビデオカメラと連動したコンピュータ制御粒子追跡装置)を整備した。これらの装置を用いて、種々の温度勾配における1匹の線虫行動を解析した。実験には、事前に温度勾配の高温方向への指向性を持つように条件付けを行った線虫を用いた。また線虫行動は、前進、後退、Ωターンの3種類に分類し、それぞれの行動の出現頻度を調べた。その結果、温度勾配が小さいほど、Ωターンが頻繁に起き、移動方向の修正が行われていることが明らかになった。このことは温度勾配が小さい場合にはΩターンにより勾配の探索を行っていることを示しているものと考えられる。同様な実験を、濃度勾配を形成した場合に関しても行ったところ、勾配増加に従ってΩターン頻度が低下することが観察された。このことは勾配探索とΩターンとの関係は感覚入力のモダリティの違いには関係しないことを示している。このことを確認するために、温度と濃度の勾配を逆に形成して実験を行ったところ、個々の勾配ではΩターンは生じなかった(つまり容易に勾配方向を認識することができていた)にも関わらず、モダリティの異なる勾配に対して、微小な勾配と同様なΩターンの増加(探索行動の増加)を引き起こすことを明らかにした。これらのことは従来定量的な評価が行われていなかった線虫の感覚情報の相互干渉について明らかにしたものであり、感覚入力に突然変異を有する線虫の系統的な行動データベース作成に資する成果と考えている。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (4件)
East Asia C.elegans Meeting (Hyogo, Japan) 143
East Asia C.elegans Meeting (Hyogo, Japan) 042
Society for Neuroscience (San Diego, USA) No.555.4
Society for Neuroscience (San Diego, USA) No.658.3