研究課題
特定神経細胞を除去した線虫、または行動に変異がある線虫について、筋収縮などの微細な変化を検出する方法を開発した。具体的には、線虫の行動を顕微鏡視野中に拘束し、線虫部位ごとの動きを定量した。線虫を固定方法として、試行錯誤の結果、線虫尾部を瞬間接着剤で固定した。瞬間接着剤自身の匂いが線虫行動に影響を与える可能性があるため、種々の接着剤についてChemotaxis Indexを調べた。その結果、忌避および誘引のいずれにも作用しない適切な接着剤を見出すことができた。この接着剤で尾部を固定した線虫について、前進と後退時における行動を、固定していない線虫と比較したところ差異は見出せなかった。このことは本線虫固定方法が適当であることを示している。顕微鏡下で線虫を固定し、その行動を詳細に解析する手法を次に開発した。このために、顕微鏡下で観察・録画した線虫画像をコンピュータに取り込み、線虫体表の任意の点に標点を置き、その点を自動追尾する方法を用いた。現画像を2値化処理することにより、標点を連続追跡することが可能となった。これら固定と標点自動追尾方法を、実際に野生型線虫に適用した。野生型線虫を顕微鏡下で固定し、2種類の異なる匂い(diacetylとbenzealdehyde)刺激をステップ状に与えた際の線虫挙動を微小解析した。この2種類の匂い物質は異なる感覚神経細胞を刺激することが知られているものであり、この刺激により線虫の頭部首振りの頻度低下が持続する時間が異なることを初めて明らかにすることができた。このことは、本開発手法が従来のマクロな行動観察とは異なる線虫行動の微細な、速い応答を検出することに利用できることを示したものである。今後は引き続き本方法により、感覚神経細胞に変異を持つ線虫を皮切りに、線虫行動データベースの整備を進める。
すべて 2005
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Society for Neuroscience 2005, No.754.5