研究概要 |
イムノトキシン細胞標的法は、遺伝子発現の特異性に基づいて特定のニューロンを神経回路から除去するための遺伝子改変技術である。この手法では、細胞タイプに特異的な遺伝子プロモーターを用いて、組換え体イムノトキシンanti-Tac(Fv)-PE40の標的分子であるヒトインターロイキン-2受容体αサブユニット(IL-2Rα)を発現するトランスジェニックマウスを作製し、この動物にイムノトキシンを投与することによって標的細胞タイプの破壊を誘導する。本研究では、高次脳機能の仕組みの解明や疾患モデル開発において有意義な実験系を提供するサルを利用して、脳神経回路における特定経路の役割を研究するために、イムノトキシン細胞標的法を応用した新しいアプローチの開発に取り組む。本年度は、イムノトキシンの標的分子であるIL-2RαあるいはIL-2Rαに緑色蛍光タンパク質(GFP)あるいは黄色蛍光タンパク質(YFP)を融合したタンパク質(IL-2Rα/GFP, IL-2Rα/YFP)を発現させるための非増殖型アデノウイルスベクターを作製した。HEK293細胞に感染させ、組換え体アデノウイルスを作製した。また、非増殖型レンチウイルスベクターを用い、IL-2Rα/YFP遺伝子を発現する組み換え体レンチウイルスも作製した。これらのウイルスをマウス脳のいくつかの部位に注入し、導入遺伝子の発現を観察した。注入部位近傍に組換え体ウイルスが感染し、導入遺伝子の発現することを確認した。今後、逆行性輸送の効率を向上させるために、狂犬病ウイルスの糖タンパク質遺伝子を利用するなど、さらにウイルスベクター系の改良を進める計画である。
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