研究課題
新しい蛍光プローブである量子ドット(半導体ナノクリスタル)を利用して、神経細胞間に形成されるシナプス構造に局在する膜分子の動態を解析する手法を開発する事を試みた。細胞表面に存在するグルタミン酸受容体の一種であるNMDA受容体を標識するために、NMDA受容体のサブユニットであるNR1分子の細胞外ドメインにペプチドタグを導入し、この変異NR1分子(myc-NR1)を組換えアデノウイルスを用いて培養海馬神経細胞に発現させた。myc-NR1を発現した海馬神経細胞を、生きた状態でAlexa-488標識抗体を用いて染色した所、細胞表面にクラスターを形成するmyc-NR1を可視化する事が出来た。更にこの方法で標識された細胞を全反射顕微鏡で観察する事により、Alexa-488の1分子を検出する事も可能であった。次に605nmの蛍光波長を持つ量子ドット(QD605)の表面にストレプトアビジンが標識されたものを利用して、biotin標識抗myc抗体との組み合わせで細胞表面のmyc-NR1分子を検出する事を試みた。Alexa-488分子の場合と同様の細胞表面の染色像が観察された。myc-NR1のクラスターが存在する部位と、シナプス構造の存在する部位の関連について、シナプス後部を染色する抗体との二重染色により検討したが、両者はオーバーラップする場合もあるが、全く別々の部位に存在する場合も多く観察された。全反射顕微鏡を利用する事でQD605の1分子を検出する事も可能であり、シナプス領域およびシナプス外領域でのNMDA受容体分子の膜内動態を長時間解析する事が可能となった。
すべて 2005 2004 その他
すべて 雑誌論文 (4件)
Neuroscience Research 51
ページ: 199-214
Molecular and Cellular Neuroscience 28
ページ: 264-274
Neuroreport 15
ページ: 971-976
Current Biology (in press)