研究概要 |
本研究は抵抗血管周囲神経である交感神経を介して起こると考えられる血管拡張反応とその機序および血管拡張に関与すると推定される交感神経から遊離される伝達物質の同定,さらに,血管周囲神経であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)含有血管拡張性神経(CGRP神経)との関係を明らかにすることを目的としたものである 本年度の研究によって以下の知見が得られた。 8週齢正常血圧ラット(Wistar系)を用い、腸間膜動脈血管床の灌流標本を作製した.標本を生理液にて定流量灌流し,その灌流圧を抵抗血管の収縮張力として測定記録し,以下の実験を行った。標本にデオキシコール酸Naを灌流して,標本内の内皮細胞を除去し、血管収縮薬メトキサミンで血管収縮させ灌流圧を一定のレベルまで上昇させた。灌流圧が安定後,動脈周囲神経を経壁電気刺激すると血管周囲神経の交感神経およびCGRP神経による血管収縮および拡張反応が観察された。また、コリン作動薬ニコチンを1分間灌流すると、濃度依存的な血管弛緩反応が観察された。ニコチンの弛緩反応は冷所保存によって除神経した標本では消失し,神経性であることが確認された。また,ニコチンによる弛緩反応を交感神経遮断薬(グアネチヂン,ブレチリウム,6-ヒドキシドパミン)を用いて薬理学的に解析した結果、抑制されたので交感神経性依存性であることが確認された。さらに,ニコチンによる弛緩反応がCGRP受容体遮断薬やカプサイシンによって抑制されるかどうか検討した結果,著明によくされたのでCGRP神経が関与していることが示唆された。これらの実験により、交感神経に依存した血管弛緩機序が存在することを確認された.次に,交感神経から遊離される伝達物質の関与については,ニコチンの反応に対して,バニロイド受容体に対する各種遮断薬が抑制したので、弛緩反応に関与する伝達物質としてプロトンまたはバニロイド受容体刺激物質が示唆された。カテコラミンおよびその代謝物の血管反応性について検討した結果、一部の代謝物に弛緩反応が見られたが、カプサイシン処置によって抑制されなかったのでカテコラミンおよびその代謝物が関与している可能性は否定された。以上の結果、内因性バニロイド受容体刺激物質としてプロトンの関与を考えられたので,ニコチン投与時の標本から流出する灌流液のpH変化を測定した。その結果、pHが酸性方向に傾くことが観察された。交感神経とCGRP神経間の伝達物質としてプルトンの可能性が強く示唆された。
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