凍結乾燥後のラット精子は、受精能を保持しておりICSIによる受精後、雌雄両前核を形成することを前年度の研究において明らかにした。本年度は、凍結乾燥後のラット精子と受精した卵子のその後の発生について重点的に検討を行った。 凍結乾燥法は前年度同様、Kanekoら(2003)のマウスでの方法に準じて行った。成熟したWisterラットの精巣上体尾部より回収した精子を凍結乾燥用保存液中に懸濁し、凍結乾燥機を用いて4時間乾燥させた。凍結乾燥精子は、冷蔵庫(4℃)で一定期間保存後超純水を用いて復水し、過排卵処理により得られた同系統の未受精卵子内にICSIを用いて精子を導入した。精子導入後の卵子は、R1ECM培養液に導入し、37℃、5%CO_2環境下で培養した。新鮮精子は本実験の対照区として用いた。 その結果、新鮮精子および凍結乾燥精子の双方において、ICSI後の卵子は高率に受精することが確認され、受精卵の約90%が2細胞期にまで発生した。さらに、2細胞期胚の約20%が胚盤胞にまで発生することが確認された。 本研究において、ラット精子は凍結乾燥後も受精能を保持しており、これら精子と受精した卵子は体外で胚盤胞にまで発生することが確認された。また、胚盤胞までの発生率は新鮮精子と受精した卵子と大きな差は見られなかった。ラット精子の凍結乾燥に関する報告が全くない中で、本研究は凍結乾燥法をラット系統保存法に応用するための貴重な成果となると思われる。今後の研究により、更なる向上が期待される。
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