本研究は体内において診断と治療の双方を同時にできるポリマーナノ微粒子の創製を目指し、これの基盤となる、表面でのバイオ反応に応答して機能発現するポリマーナノ微粒子の調製と評価を行う。すなわちバイオ分子を結合できるポリマーナノ微粒子の調製を以下のとおりに行った。ポリマーナノ微粒子に人工生体膜表面を構築するように、バイオ分子の非特異的吸着を阻止しつつ、特定のバイオ分子を固定化できるリン脂質ポリマーを合成した。液中溶媒乾燥法によりポリマーナノ微粒子を作製する際、コアポリマー溶液を水媒体中に分散させる乳化剤としての性質をこのリン脂質ポリマーに持たせるような分子設計を行った。本年度は、各モノマーユニットの組成と溶解性との関連を検討しながら、最適化した。ポリマーナノ微粒子は、一般的に利用されている液中溶媒乾燥法により調製するが、乳化する水媒体中のリン脂質ポリマー濃度を調節し、生成するポリマーナノ微粒子の直径が150-200nm、表面電位が-3.0〜0mVとなるようにした。得られたポリマーナノ微粒子の表面分析をX線光電子分光計(現有)により解析し、表面の官能基密度を決定した。次いで、ポリマーナノ微粒子表面の修飾を行った。まず、抗体を結合させて、抗原との反応による凝集を検討した。その結果、良好に抗原・抗体反応が進行することがわかった。さらに得られたポリマーナノ微粒子表面に、抗体、酵素および片末端アミノ基を有する水溶性ポリマーを、それぞれの比率を考慮しながら固定化した。特にグラフトポリマー鎖には細胞膜との接近によりポリマー鎖の溶存状態が変化するような電荷の導入を行った。抗体が抗原を認識しやすい環境を作るとともに、酵素活性が効果的に発現できるような修飾条件の検討中である。
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