本研究では可視光側に広い作動領域をもつチタニア光触媒を主剤あるいは助剤としたブリーチング剤を作製し、モデル化した着色エナメル質表面ならびに抜去歯を用いて、低輝度可視光照射下における脱色の効果について検討することを目的としている。さらに培養細胞系を用いて、可視光側に広い作動領域をもつチタニア光触媒ブリーチング剤の安全性試験を行い、より安全で効果の高いブリーチング剤を試作することを目的としている。 本年度においては、まず天然歯と同程度の着色性をもつモデル歯を水酸アパタイトにより作製した。作製したモデル歯の着色性を変性させたテトラサイクリン系の抗生物質により確認した。次に、可視光作動型チタニア光触媒を助剤とした過酸化水素水系ブリーチング剤の調製を行った。比較対照のために、同様に過酸化水素を主剤とし、従来のアナターゼ型光触媒を助剤としたブリーチング剤も調製した。さらに、LEDを用いた可視光光源および照射系を作製した。 作製した作動型チタニア光触媒ブリーチング剤により着色モデル歯を漂白し、その効果を分光型測色計により測定した。その結果、可視光作動型チタニア光触媒を助剤とした過酸化水素水系ブリーチング剤は過酸化水素水濃度が、従来の高濃度過酸化水素水系ブリーチング剤の10分の1程度でほぼ同様のブリーチング効果が得られた。しかし、従来のアナターゼ型光触媒を助剤としたブリーチング剤によってはこのような効果は得られなかった。従って、ブリーチング効果の点で可視光作動型チタニア光触媒を助剤とした過酸化水素水系ブリーチング剤の有効性が示されたことになる。
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