研究概要 |
直接メタノール形燃料電池セル(電極面積16cm^2,スタック数10セル)を用い、5〜15mmol/Lのグルコース水溶液を5ml/minで還流し、グルコースをエネルギー源とする燃料電池による発電を試みた。グルコース濃度5mmol/L,10mmol/Lおよび15mmol/Lのとき、それぞれ0.6μW/cm^2,1.6μW/cm^2,2.2μW/cm^2の最大電力密度の電力が得られた。また、開放起電力は、それぞれ、300mV,650mV,750mVであった。これらの値は、ペースメーカーを作動させる為に必要な電力である電源電圧2.8V,電力密度4μW/cm^2よりも小さな値であり、直接メタノール形燃料電池をグルコースを燃料として流用する方法では、比較的大きな電池セルを用いてもペースメーカーを駆動するのは、困難であることが判った。 そこで、本研究では、以下に示す新規なグルコース燃料電池を開発した。直径1mmの孔を1mm間隔で設けた金電極板上に、真空蒸着法によって金(111)面を作成し、その表面にアンダーポテンシャル析出法(UPD法)によって、銀分子を単分子層以下で析出させ、グルコース酸化触媒アノード電極とした。カソード電極には、通常の白金-炭素触媒電極を使用し、電解質として、Nafion117膜を用い、ホットプレス処理によって、新規なグルコース酸化触媒燃料電池セル(有効電極面積20cm^2を作成した。5〜15mmol/Lのグルコース水溶液を5ml/minで還流し、グルコースによる発電を試みた。開放起電力はグルコース濃度に依存せず、約600mVであった。グルコース濃度5mmol/L,10mmol/Lおよび15mmol/Lのときの最大電力密度は、それぞれ、1.6μW/cm^2,3.6μW/cm^2,7.1μW/cm^2であった。また、ラット血液から分離した血漿を、試作したグルコース酸化触媒燃料電池セルに供給した処、起電力約600mV、最大電力密度2.6μW/cm^2が得られた。 すなわち、本研究によって開発したグルコース酸化触媒燃料電池セルを10セル程度スタックとする方法、あるいは平面内に配列させたセルを電気的に直列接続することによって、ペースメーカーを駆動できる程度の電力密度4μW/cm^2,駆動電圧2.8Vを得ることのできる可能性を見出した。
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