研究概要 |
液晶性高分子を利用した新しいバイオマテリアルを開発するため,本年度は室温で液晶性を示す側鎖型液晶性ポリシロキサンを合成し,分子配向が制御されたナノ構造制御表面を創製することを試みた。現在までの研究で,次のような結果が得られている。 1)側鎖型液晶性ポリシロキサンの合成 ポリシロキサンの側鎖に剛直なメソゲン基を導入することによって,室温付近で液晶性を示す側鎖型液晶性ポリシロキサンを合成することができた。このとき,メソゲン基導入量の異なる側鎖型液晶性ポリシロキサンを合成するために,ポリシロキサンへのメソゲン基の導入条件について検討した。さらに,熱分析測定や偏光顕微鏡観察などによって得られた側鎖型液晶性ポリシロキサンが室温付近で液晶性を示すことを明らかにした。また,液晶状態を示す温度範囲はメソゲン基導入量に強く依存することがわかった。 2)側鎖型液晶性ポリシロキサンの気液界面挙動 合成した側鎖型液晶性ポリシロキサンを水面上に展開させ,そのときの表面圧と面積との関係について詳細に調べた。その結果,側鎖型液晶性ポリシロキサンは水面上で均一に広がり,表面圧を増加させるとメソゲン基が次第に配向し始めた。また,その表面圧-面積曲線からは側鎖型液晶性ポリシロキサンが表面圧に依存して大きく構造変化することが明らかとなった。さらに,水面上に展開させた側鎖型液晶性ポリシロキサンをLangmuir-Blodgett(LB)法によって基板上に積層させ,側鎖型液晶性LB膜の調製に成功した。このときの膜構造に及ぼす積層条件の影響について検討した結果,ある特定の条件の時に均質なLB膜が形成されていることが原子間力顕微鏡(AFM)観察によって明らかにされた。これらの結果より,側鎖型液晶性ポリシロキサンLB膜は側鎖メソゲン基が配向したナノ制御構造を有すると考えられた。
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