研究概要 |
本研究では,心臓壁に沿って伝搬する約100Hzまでの成分をもつパルス状振動の伝搬状態と伝搬速度を,収縮期圧・拡張期圧ごと,100Hzまでの周波数帯域で周波数ごとに,イメージングするための超音波計測方法を確立することによって,高精度心臓疾患診断の応用の可能性を探究するとともに,数百Hzまでの振動成分による医療診断というまったく新しい研究分野の開拓する. 本研究によって,従来利用されてこなかった情報を有効利用した全く新しい心筋の診断が可能となり,また,不整脈における刺激伝導・興奮の旋回路の同定,心筋梗塞による壊死領域の同定などの心臓疾患の診断を非侵襲で高精度に行うことが可能となる. 本年度の研究実績は次のように纏められる. 1、多方向に超音波ビームを走査し,数百点で振動を同時に計測する計測システムの構築 既存の超音波計測装置における超音波ビーム方向のリアルタイム制御ソフトウェアを改造し,伝搬する振動の波長を考慮して広範囲にわたる心臓壁の振動の計測を可能とした. 2、in vivo実験によって心臓へ適用し,心臓壁の振動を同時に計測 健常者数名に関して計測を行い,再現性・精度などを評価した. 3、心臓壁内に設定した数百点で同時に計測された速度波形の時間的変化のイメージング 新たにソフトウェアを作成して,多数点で同時に計測された心臓壁振動を解析してパルス状振動の伝搬状態を断層像上に重ね表示した. 4、心臓壁を弾性板と近似したときの板のラム波の伝搬モデルの理論解析 得られた振動の伝搬の振動モードを決定し,その伝搬速度が媒質の何の定数によって決定されるかを理論的に調査検討した. 5、心臓データに関するパルス状振動の伝搬速度の算出 実際の心臓データに関する板のラム波の伝搬速度を算出し,そのイメージングを行うとともに,(4)の理論解析に基づいて,心筋媒質の物理定数を決定した.
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